獣医師・動物医療 グリーフ ケア アドバイサー 阿部美奈子先生のペットロス・ペットライフ・サポート




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獣医療ソーシャルワーカーのお仕事

飼い主の心をケア 話聞き、疑問や不安を解消

神奈川県秦野市内の動物病院での出来事から

 ペットへの医療の高度化とともに、飼い主の心のケアを専門とする「獣医療ソーシャルワーカー」という新しい役割が生まれています。

 同市に住む物部淳子さんが、十三歳になる愛犬「秋」の異常に気がついたのは、二月下旬。めったに吐かない秋が、その朝、食事をもどし、午後には頭や体をふらつかせた。
 すぐかかりつけの同市内にある「みかん動物病院」へ。獣医師は「眼振(目の揺れ)があります。高齢によるものだと思いますが、脳腫瘍(のうしゅよう)の可能性もあります」。

 目の前が真っ暗になった。前の犬が死んだときのショックがよみがえってきて、診察室を出た後、体が震え始めた。
 すると、一人の女性に呼び止められた。「よかったらお話ししませんか」。獣医療ソーシャルワーカーの阿部美奈子さんだった。話を聞いた阿部さんは、「秋ちゃんのことはひとりで抱え込まず、一緒にみていきましょう」。物部さんは、その言葉に救われた思いがした。

 阿部さんがソーシャルワーカーとして、この病院に来るようになってまだ間もない。以前は普通の獣医師として勤務していたが、飼い主の感情にうまく対応できず、悩むことが多かった。日本ペットロス協会の講座を受け、心理学を勉強するうち、海外の獣医療ソーシャルワーカーの存在を知った。「いい獣医療には、動物の治療と飼い主の心のケアの二本柱が必要だ」と確信した。

 今は、個人で飼い主のカウンセリングをするほか、動物病院に行ったり、病院スタッフや看護師学校でもコミュニケーションスキルを教えている。

ソーシャルワークとグリーフケア

 「獣医療はデリケート。動物が話せない分、医師は飼い主とよくコミュニケーションすることが必要です。でも獣医療が高度化し、獣医師は治療で精いっぱいになりがち。飼い主の疑問や不安をそのままにしておくと、後に医療トラブルの可能性もでてきます。そのため、飼い主サイドに立って話をするスタッフが大切なのです」

 たとえば物部さんのケースでは、獣医師が最初に最悪の可能性まで提示してしまった。獣医師はそれが誠意だと思っても、「飼い主の様子次第で、話すタイミングを選ぶ必要もある」。

 みかん動物病院には、獣医師が九人。難しい手術や終末医療を担当することも多い。昨年、病院利用者にアンケートをしたところ、「最初は治療の内容や金額に不安を持った」という飼い主が三割ほどいた。

犬の秋を前に、飼い主と話をする阿部美奈子先生(左) そこで、飼い主に重要な説明をするときは、担当医とともに阿部さんも同席する。福原美千加院長は、「今まで自分たちは、飼い主が取り乱すと、つい言葉で事態を収拾しようとしていましたが、それは逆効果。まず飼い主の話を聞くことが大切だと知りました。ソーシャルワークを学ぶことで、飼い主対応の経験が少ないスタッフも、適切な対応ができるようになれば」。

物部さんの秋は、幸い深刻な病気ではなかった。
「いずれみとることになるでしょうが、阿部さんのような専門家がいると、とても心強い」と話す。