第1回動物医療グリーフケアフォーラムInマレーシア開催報告
北海道から九州まで広範囲にわたる各地の動物病院から獣医師、看護師、トリマーなど総勢70名がクアラルンプールに集結。
25日>午前>成田&関空から出国
VGCFと書かれたオレンジカラーの旗で参加者を誘導、貸し切りバス2台で空港から市内へ。
レストランHAKKAでWelcome Dinner。Steam Boatというマレーシア式寄せ鍋を楽しみ、前夜祭会場のHeli Lounge Barへ。
翌日のフォーラムの成功を祈願し“乾杯”
昼間はヘリポートとなるこの屋上からの夜景は、診療で疲れた医療者のこころを開放してくれる。
あ~なんて美しい…感嘆の声が響き渡る。
26日>動物医療グリーフケアフォーラム開催
ホテル21階Sky Loungeにセッティングされた会場にて
午前9時スタート
10名の症例発表と2名のフリースピーチ。
3例づつ発表後、私が「グリーフケア」の視点から評価とアドバイス。
10例を通して「ペットのグリーフ}を中心に、さまざまな角度からグリーフケアを伝えることができた。
主役はペット。
ペットの目から景色を見て感じる力を高めること。
治療が最終地点ではなく、治療の後、ペットが少しでも楽に生きているかどうかをしっかり確認していくことが重要。
例えばペットが日常を生きてきたホームを離れ、治療のために入院するが入院中、ペットがホッとして笑う時間はあるのだろうか、
大好きな飼い主との面会時間は貴重、
飼い主がいつもの聞きなれた声で笑顔で名前を呼んでくれるのか、いっぱい褒めてくれているのか、ふれあうことはできているのか、安眠できているのか、食べることができるのか、緊張なくトイレができるのか…など
個々のペットに合わせて安全環境を考えていかなくてはならない。
そのためには、日頃から飼い主にペットの日常の様子についてお聞きしながら、ペット情報を集めておくことでペットが喜ぶアイディアを考えることができる。
これがペットのグリーフケアである。
参加した一人一人が自分の働く動物病院で出会ったペットや飼い主を思い浮かべながら真剣に考える時間だった。
フォーラム後、貸し切りバスにてクアラセランゴールへ
大きな川と海が合流する地域には森から野生の鷲が飛んでくる。
Eagle watching!
力強い姿をまじかで見ながら自然とパワーが充電されていく。
夕食後は、両側がマングローブの生い茂る川をゆっくり船で移動。
真っ暗な景色の中に広がる小さな小さな光たち。瞬く間に連動しまるでクリスマスツリーだ。
これがマレーシアの蛍。
日本で見る源氏ホタルとはまた違う景色に感動。
27日 今日は市内観光を通して異文化交流を楽しむ企画!
ツインタワーの前で集合写真を撮影後、Royal Selangor pewter factoryへ。
マレーシアの特産である錫と銅などを混合したPewterと呼ばれる材料から、さまざまな製品はすべて職人さんによる手作り。
参加者もワークショップでお皿作りに挑戦。
Hard Knockingという言葉どおり、ハンマーでPewter板をたたきながらお皿の形にしていく。
70名が一斉にお皿をたたき始める光景は迫力満点。
ストレス発散にもなったようだ。
Only Oneの作品は素敵な旅の記念だ。
昼食はカルチャーセンターにて。
マレーシアは多民族他宗教国家。
マレー系、中華系、インド系が織り交ざった伝統的なダンスを見ながらマレー料理ナシレマを楽しむ時間。
ステージにはVGCFチームからも参加。
マレーシアのダンスに挑戦、
言葉を超えた交流で最高の盛り上がり!
大笑いしたあとはヒンズー教の聖地、バトウケイブへ。
カラフルな階段○○段をあがり、たどり着いた洞窟の中ではヒンズー教のお祈り体験。
額に白と赤の粉を付けてもらい安堵感の表情となる参加者たち。
パワーをもらえたようだ。
生息するお猿さんたちはベビーラッシュ。
母猿は赤ちゃんの安全基地。
その姿を身近で見せてくれる。
植物性塗料へなで肩や腕にきれいな模様を描いてもらった人も。
日本と違う異文化だからこそできる貴重な体験にワクワク。
お土産はセントラルマーケットへ。
そして旅の最終地、ピンクモスクへ。
イスラム教の人々が集うモスクではスカーフとガウンを貸し出され中へ。
偶像ではなく、メッカという「方向」に向いてお祈りを捧げる教え。
1日5回、コーランが流れお祈りを捧げる人々。
マレーシアには、イスラム教、仏教、ヒンズー教という3大宗教、そのほかキリスト教が存在するが宗教は異なっても国全体でお祝いするという互いを認めあう文化がここに存在し、宗教が人々のこころの安全基地となっている。
今回、多くが初対面だったにもかかわらずVGCFチームが一瞬で
一体感を生みだしていた。
「同じ方向を向いている」人々の集まりは素晴らしい。
人と出会った動物である「ペット」
彼らが最期まで安全基地で生き続けることができるように
「ペットのグリーフケア」を学ぶ仲間がマレーシアに集まった
2泊3日は大盛況のうちに完了!
終わりに
動物医療グリーフケアを構築して15年目
集大成がこのような素晴らしい形で実現したことは自分へのギフトになりました。
ペットと出会う前と後では人の人生の質が変わるほど、ペットの存在価値が高まる今日。
ペットを必要とする人にペットの死後、再びペットに出会えるよう生前のグリーフケアを広げていきます。
2019年も、ペットの心と体の両面を癒す動物医療を目指し全国を駆け抜けます。どうぞよろしくお願いいたします。
来年の目標:ペットのこころに寄り添う小児科獣医療/人材育成
ペットのこころは子どものまま老けていかない。
体の痛みの原因を正しく判断し、できる限り軽減することで、子どもたちを恐怖から守ることができる。
必要な治療を、個々のペットのこころに寄り添いながら実施する方法を考えなければ、ペットは警戒心を高め決して楽にはならない。
わがコのこころの理解者として配慮してくれる獣医師の姿勢は、飼い主のグリーフケアとなり、信頼が深まる。
ペット主役の安全なエンディングは、死後の過酷なグリーフへの救い。
喪失感と幸せ感が共存するペットロスに導き、悲嘆から回復、再生、命のバトンタッチにつなげたい。
人間の言葉を話さないペットだからこそ、表情を重視、彼らの目から景色を見て感じる力を持つ人材の育成を目指す。
獣医師・動物医療グリーフケアアドバイザー 阿部美奈子