ペットと人のハッピーライフを 出会いからエンディングまで
獣医師・ 動物医療 グリーフ ケア アドバイサー
阿部美奈子先生の合同会社Always

  

 

“PAWS” ~ 保護シェルター in Malaysia

マレーシアのペットの保護情報



PAWSは、私の居住するコンドミニアムから車で5分の場所にあります。
マレーシアはイスラム教が国境の国であり、イスラム教の教えでは、
「犬」は触ることを許されない存在です。

保護シェルターがあることを知り少々不思議に思っていたのですが、
多くの中国系マレー人やインド系マレー人、海外からの移住者などが犬を飼っているそうです。

外からは平屋の建物がいくつか見えるのですが正直古そうで、
管理はどんな様子なのかなと正直不安な気持ちを持っていました。

でも入り口から中に入り、一転!


地面はコンクリート。整備されたハウスやグラウンド。
掃除が行き届き大変清潔な空間に感激です。
①現在は犬およそ200頭、猫およそ100頭、うさぎ4羽を保護。
2〜3か月齢の子犬も約20頭。

②スタッフは6名。住み込み。賃金制。

③持ち込みにかかる費用/犬51リンギット(1300円) 猫30リンギット(800円)


④譲渡にかかる費用/犬51リンギット(1300円) 猫30リンギット (800円)

⑤近くにホームドクターを確保。

⑥理由がない限り、避妊手術、去勢、狂犬病ワクチン接種後の譲渡。


PAWSは寄付で経営されている組織です。

マレーシア人の経営者のもと、ミャンマーから移住したスタッフが、
愛情深く動物の世話をしています。
実はコンドミニアムの警備員のほとんどがミャンマーから赴任していていますが、犬が大好き。
笑顔で犬を眺める彼らから、犬が大好きな気持ちが伝わってきました。

敷地内には集団で生活する犬のスペースが3か所、個別のケージが並ぶスペースが4か所。


隣に猫の住宅スペースとして2階建てのハウスが並ぶスペースが3か所。


ウサギのケージが並ぶスペースが1か所。


ハウスに入居している猫にはすべて名前がついていて、名前と一緒に性格や特徴の
紹介が書かれています。


病気を持つ猫のハウスにはフェンスに病状と投薬内容、ごはんへの配慮などの指示が
添付されています。


大変広くて床は水を流した状態で悪臭もなく清潔に保たれています。
犬や猫の表情を見るとその笑顔を見て人の愛情の存在がわかります。
驚いたことは無駄吠えをする姿がほとんど見られないことです。
穏やかな表情でとてもフレンドリー!



最初は神経質だったコにはまず2~3週間くらい個別に世話をして、
徐々にトレーイングしながら関係を作っていくそうです。

猫のハウスはそれぞれ2階建てになっており、性格の合うコどおし3~4頭が同居。
十分な空間です。


入国手続きについて

マレーシアから日本に入国する場合には厳しい検疫があります。
狂犬病の予防接種を2回受けたのち、日本やオーストラリアなどの検査機関で抗体価のチェック。
抗体価を確認後、6か月マレーシアに滞在しなくてはなりません。
6か月間、発症がないことが確認されてようやく日本に入国が許可される流れ。

海外赴任中にペットを飼い、帰国時に手離すことが少なくない状況。
日本に限らず、多くの企業では配置転換を告げられるのは2か月前。
十分に考える余裕もなく混乱の中、「保護シェルター」へ預けるケースもあるのかもしれません。
具体的な方法はまだ思案中ですが、今後、マレーシアではこのような飼い主に向けて、
そして方法を一緒に考えながらアドバイスしていきたいですね。

「まだまだマレーシアでは飼い主の避妊や去勢への理解が少ないため、出産してしまう。」
「持ち込みの数が多く、譲渡は少ない現状で保護数は増えていくのです。」
小動物を診る獣医師が現在マレーシアには約250人。

現在、2012年先進国入りを目指して発展中のマレーシア。
経済の発展とともにペットの数も増えてきています。
飼い主に対する啓蒙もこれからの国なのです。

「1頭でも多くの動物にホームを探したい。」
ここにはスタッフの温かい眼差しがありました。

譲渡先が決まるまでのシェルター生活ですが、
このように愛情深い環境で生活できることは大変幸せですね。
2012年マレーシア滞在ではPAWSと関わりながら譲渡先のご紹介など、
自分にできますことはなにか、微力ではありますが考え行動していきたいと思います。



2011.04.01.(取材・撮影2012.03.30)